この夏は、どうしても”やさしい”建築を見たくって。
やさしい建築といえば、なんとなく設計者の候補はふたり。中村好文さんと、藤森照信さん。もろもろスケジュール的にいけそうな場所をピックアップして、いざ。
焼き杉板がずらっと張り巡らされたラフな外観。スカッと抜けた周辺の環境に、わりとポッと、突拍子もなく置かれた感じは、ちょっと拍子抜けします。中央にうがたれたガラスのエントランスをくぐり抜けると、そこには明るい中庭、桂の木が1本。なんだか伊丹十三さんがまだそこに居るかのような、やさしい雰囲気。
結果的に、建築というよりも、伊丹十三という人間が、とても印象に残りました。完全に展示に引き込まれた。ものすごい人だったんだなぁ。
肝心の建築は、というと、それはもう伊丹さんの“家”でした。中村好文さんが手がけた建築の中でもかなり規模の大きい部類に入ると思うのだけど、それでもなお住宅のスケールを心地良く纏った建築。材料の使い方や、家具、建具の収まり感などは素晴らしく、気配りの建築。
とくに、そこで働く人たちへの配慮がよくって。おそらく展示ケースもしっかりバック導線が確保されているだろう造りになっているし、収蔵庫もたっぷりの面積を割り当ててある。“使う人”の具体が、とてもよくイメージされてる気がしました。
カフェの吊り戸棚、受付のカウンターなんかも必見です。
というわけで、これは紛れもなく“記念館”でした。そして、やさしい建築。