ちょっとした用で宮崎県へ。
実は宮崎、初訪問。空港に降り立ってすぐのヤシの並木に南国ムードを感じて。
チキン南蛮発祥のお店行ったり、地鶏食べたり。食べて飲んでばっかりの最近ですが、気持ちはしっかり。
海幸山幸号。
廃線の危機にあったJR日南線。そこを走る観光列車。デザインはもちろん水戸岡鋭治さんで、地元の名産である飫肥杉をふんだんに使ってある。なんと、外装にも。日に焼けたり、風雨で色が飛んだり、時間や環境によって変化する杉のいろんな表情がそこかしこに。
中はこんな感じ。
この車両、元々は台風14号で壊滅的な打撃を受け、復旧されずに廃止になった高千穂鉄道のトロッコ列車。それをJR九州が買い取り、改造したものだそうで。 ここまですると、一からつくった方がきっと安いのだろうけど、それを敢えて実行するJR九州の心意気たるや。
これが鉄道のデザインとして“正しい”のかどうかは分からない。けれどその、時間の積み重ねを大切にする姿勢、入った瞬間にかすかに香る杉の香り。文字通り海と山と、暖かな木目に囲まれて穏やかな風景の中を走る体験は素晴らしい。そしてなにより、それがココにしかないもの、であること。
鉄道オタクではないボクにも、グッと来るもの、考えさせられるものがある。
杉つながりでここにも。
日向市駅。設計した人、内藤廣。
これまた地元産の杉。変断面集成材を横架材に使った、スチールとの混構造。
元々、杉という木は柔らかく、構造材にはあまり向かない。加えて宮崎県の杉は、その温暖な気候から成長が早い分、キメが細かくなく、繰り返し荷重で変形しやすいんだろうと思う。だから、これはつくるのむずかしかっただろうなというのが容易に想像出来る。
内藤さんはこう言ったそう。「デザインは好き嫌いがある。でも、安全は絶対です」と。
それほど使うのがむずかしかった材料を、性能試験をして使えるところまで持って行ったのは、地元の想いが強かったらからだという。
出来たコトだけに満足するのではなく、その想いに応えるように、きちんと全てがデザイン処理されていて、清々しい。
駅舎ばかりが注目されるけれど、町をあげての3大事業をミックスして実施した行政手腕にも注目しないといけない。そしてこの広場。駅前に商業を置くのではなく、市民が集まってイベントができる広場を計画する。
ふつうにね、学生のコンペのように、自由に考えるとこういう計画ってスッと出てくる。でもそれを実現するのがむずかしい世の中。資金と収益が見込めないと、事業性はないと判断される。そこを乗り越えるチカラ。
駅舎だけじゃなく、広場も、高架の構造も、再開発事業も目指す方向が一緒で明快。
プロジェクトを進める組織論についても、学ぶところが大きかった。
どこでみんないい顔してる。「信頼」という言葉が身に染みた2日間。