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5月らしい、イイ気候の土曜日。午前中に仕事片付けちゃって、午後からはD&Departmentへ。中谷ノボルさんの公開取材を覗きに。建物のリノベーションを中心に、いろんな活動をしている事務所の代表です。ダイビルに事務所があった時代に、喫茶・大大阪でゼミをやらせてもらったり、いろいろ思い出があったりするのです。
NIPPON VISION にちなんだイベントなので、内容は「観光」というテーマに引っ張られ。とっても興味があった Hostel 64 Osaka のこともたくさんしゃべって頂けました。「ホステル」という宿泊の業態のことも。
ボクは、宿泊体験に対する意識が低いってツイッターで書いた気がするのだけど、それは料金の問題がとても大きいということに気付きました。
NIPPON VISIONでも「奈良ホテル」や「無可有」を初めとするすてきな宿がたくさん紹介されてます。他にもいわゆる“良い宿”がたくさんあるのは知ってる。でも、だいたい宿泊料はお高め。良いものは高い、っていう価値観は理解できるし、払えないわけじゃないけど、さすがに学生さんとかには難しい価格帯だと思います。それならば、他に行きたい場所を優先したい、っていう気持ちは当然のこと。そして今でもボクは、海外ひとり旅にはホステルをけっこう使います。
海外には、ホステルがたくさんあって、旅行してる若者にたくさん遭遇します。日本との、習慣や意識の違いというのあるだろうけど、若い人たちにとって、料金が安い宿っていう、旅のインフラが揃っているということは、ものすごく大きいことだと思う。
スペイン グラナダのホステルにて
たいていのホステルは、安い。そしてドミトリー=相部屋です。だなんていうとネガティブなイメージだけど、実際はそれだけじゃない。ヘルシンキはオリンピックスタジアムの一角にあったし、NYだとマンハッタンのど真ん中という立地。古城をリノベしたのもあった。今回のスペインではグラナダのオアシスという所に泊まったのだけど、ここも古いアパート(?)をコンバージョンしてて、中庭や奥にワのある建物が、特徴的でそれだけで印象に残る。
相部屋な代わりに共用のリビングがあって、他人を許容する状況があり、そこらじゅうで他人同士の会話が起こってる。誰かがお酒持ってきたら自然とそれが回ってくる。
公用語はたいてい英語。個々人の積極性に差はあれど、みんななんらかのコミュニケーションを求めてやってきてるのがほとんどです。
実際、グラナダのホステルにあるバーで飲んでた時には、まず韓国の学生さんに英語で話しかけられ、フランスの女の子に話しかけられ、その彼氏とサッカーの話をし、最終的には4人で街に繰り出して夜中まで飲む、なんて状態になっちゃってました。
ボクも英語は全然得意じゃないのだけど、みんな理解しようと色々試みてくれるし、知りたい、聞きたいっていう気持ちがあるから、それをイライラもしない。そういう関係っていうのはとても健全で、ボクは良いなぁと思うのです。
そうして若いうちにいろんな場所を巡って、いろんな人やローカリティに触れる。いろんな観光地にも行く。そりゃ、観光に対する意識も醸成するし、オペレーションだって上手くなるわけです。
宿泊施設は、観光の重要なインフラ。
と、思ってたところ。中谷さんが、それを実行しているのがほんとにスゴい。
ナガオカさんが「なぜホステルに泊まるんですか?」という質問を投げかけたときに気付いたこと。難しいなぁと思ったのは、個々人の“お客”としての経験値が、一般的なショップに対するそれよりも圧倒的に少ないということ。そもそもの経験がないと、何が良いのかがわからないのです。
カフェや、雑貨屋さんや、レストランやといった業種は日常的によく利用するから、立場が逆転した時も、何が良くて何が悪いかが、わりとイメージしやすい。だけども、宿泊施設となると、一般的には非日常。だから、良いイメージがつくりにくい。特にホステルなんかは。
日本にホステル文化が根付いていないっていう事実は、受け入れなくっちゃいけない。他にね、日本的な解決方法を、「おもてなし」「清潔感」といったキーワードの中から、日本でのあるべき姿を探す必要が。
Hostel 64 Osaka の意識した日本的なもの、も、お話してくれました。ボクにとってこの公開取材、とても意味深いものになったのでした。
スペインの信号機はだいたい黄色い箱型をしてました。でもって、ぜんぶ縦につながったカタチです。日本だと雪国仕様、ですね。(日本の豪雪地帯では、雪が積もらないように車用の信号も縦につながってる)
当然新しいものは、LED光源のものに置き換わっていってるのだけど、その、バルセロナで見た新型信号機が秀逸で。
バルセロナの街角。黄色い信号機がたくさん。
よく見ると、同じカタチが積み重なってる。歩行者用も車用も高いところも低いところも、すべて同じユニットの組み合わせで構成されてます。
信号機にありがちな“庇(ひさし)”もなく、シンプルなカタチ。黄色、という強い色の分、カタチの表現は極力抑えられてます。
ユニットの組み合わせは、2段だったり、3段だったり。一番上だけが違う方向を向いてる、なんてのもありました。この、「回転」という機能は、このデザインの大きな発明です。
前面は真っ黒ですけど、発光するLEDの範囲は基本どおりの丸型です。赤信号・青信号なんかは全部のLEDが光るから、ふつうに丸い。
でね、歩行者優先とかのピクト表現が必要な場合は、LEDの発光配列をプログラムしてるだけです。こうすると、黒いフチ取りとLEDの非発光部分が一体化して、「○」が消える。全面が一体でひとつの表示面になるわけです。
そう、カタチに関しては、徹底してユニット。この徹底ぶりが、フォーマットをそろえる意味を、より明確化してます。
とってもシンプルな回答なんだけどね。ついつい“バリエーション”とかつくりたくなるもので。こういう、「答えの強度」は、見習わないとなぁと思ったのでした。印象的な風景です。
スペイン、マドリッドに到着したのは午後7時過ぎ。翌日、北のバスク地方をめざし、4時間半バスに揺られる。降り立った場所は、ビルバオ。
1997年にオープンした美術館を訪れること。今回の旅でここだけは、明快な目的があって。
スケッチ、映像、写真、図面。いろんなメディアを通して見知っていたあの“モンスター”ミュージアム。なんだかんだいって、僕ら世代のスター建築、だと言ってもイイと思う。その場所に建つという体験は、ただそこにある建物を体験するのとは明らかに違ってました。正直、鳥肌立ったもの。
でもね。でもでもビルバオは、それだけじゃなかったです。美術館はあくまでも、文化的再開発の起爆剤だった。それ以外の、都市全体のデザインマネジメントが上手くいっている、という印象が、ものすごく強く残りました。
街を流れるネルビオン川。に掛かるカンポ・ヴォランティン橋の美しいシルエット。
旧市街側から、グッゲンハイム美術館の方向のアングル。
カラトラバの設計なので、近づくとそれなりに複雑な感じになってます。当然ながら、歩行者専用。
緑のじゅうたんの上を走るトラム。
実はこのラブリーさが、一番印象的だったかもしれません。軽量なライトレールだからこそできる軌道緑化。点々と咲くちいさな白い花。これが新市街をずーっとつらぬいてます。
公共交通はバス・地下鉄・トラムと、とっても充実。さすがに運転間隔は若干長いけど、料金体系も明快だし、迷うこともない。
そして。
グッゲンハイム・ビルバオ。設計した人、フランク・O・ゲーリー。
実はこちら側が裏側で、正面エントランスはまったく逆にあります。だまされる人も多いのだけど、そのおかげで川を取り込んだ回遊導線が成立してる。見たまんま、カタチはものすごく違和感あるはずなのに、ぐるっと回ってるうちにその違和感はずいぶん中和されてたりして。
橋の手すりの高さが、ベンチぐらいで、奥行きもベンチぐらい。日本じゃあり得ないけれど、そこでたくさんの人が風と太陽を浴びながら休憩してる風景は、やっぱりいい。
珍しく内部は写真まったくNGでした。コミッションワーク的なものもあり、展示内容は見応えありました。リチャード・セラを、はじめてスゴいと思った。
飛行機には乗ってないけど空港にも。こちらも設計はカラトラバ。
簡単にできそうなものも、この人にかかると複雑化する。それが良いのか悪いのか。この空港もずいぶんアクロバティックな構造で、実はボクが立ってるこの下部は、15mぐらいのキャンティレバーだったりする。
開発にあわせてつくられた地下鉄は、ノーマン・フォスターのデザイン。
プランはものすごくオーソドックス。スッキリシャッキリ、工業的なデザインだけど、線が細いから無骨さは感じません。地下鉄だけど、空間のボリュームが大きくて贅沢。
でも実は、いくつかある駅は、まったく同じデザインフォーマットで。駅名の看板を見逃すと、ときどきどこの駅にいるかわかんなくなるんですけどね。
とまぁ、代表的なところを。
トラムもしかり、地下鉄もしかり。美術館を中心とした文化・観光都市として成立するために、デザインコントロールはかなりしっかり行き届いてる印象を受けました。
バスだって、ゴミ箱だって、パーキングだって、掃除のおじさんの車だって。横断的なビジュアルイメージですっきりまとめられてます。ジャンルや組織、みたいな縦割りを、ここでは感じない。もっと他に中心となる概念があって、みんながその方向を向いて動いてる。それは十分すぎるほど分かりました。
ご飯は旧市街のバルをはしご。旧市街の複雑な街路も活気があって、街としてのバランスがとれてる。
フランスパンの上におかずが乗ってるピンチョスっていうスタイル。バスク地方の食べ方らしい。同じスペインのバルでも、地域によって食べる物が違う。そういうのがね、やっぱり面白い。