2007年も締めくくり間近。ばったばったと色んなことを2007年に押し込んで、ギリギリの年末。なんとかたどり着いた休みの初日は大学時代の友人たちと、恒例行事になりつつあるユルユル1泊旅行へ。今年は下呂温泉でした。年の暮れ、ボクにとっては1年かけて少しずつズレてきたリズムを、元に戻す時間だったりします。
せっかく岐阜まで来たんだからと、2日目の帰り際はココへ寄って。
瞑想の森 市営斎場 (設計:伊藤豊雄建築設計事務所)
夕暮れの山間に浮かぶ、複雑な自由曲面の屋根。薄く白いそのシェル構造は、はらりと浮かぶ布のようでもあります。と、思ったんですボクもね、中に入るまでは。
中に入るとその印象は一変。圧倒的に空間を支配する天井、というかなんというか。建築というよりも“洞窟”に近い印象。もちろん四方は巨大なガラスによって開放されているのだけれど、覆い被さるものの強さに圧倒されてか、内部にいるという感じがすごく強い。
曲面はその印象をくずさぬように、とてもデリケートにデザインされていて、天井に見えるのは、ギリギリまで埋め込まれたスプリンクラーと非常灯のみ。照明は全て地上レベルからの間接照明でした。
この照明計画がとても印象的で、うねる屋根の陰影を見事に浮かび上がらせてます。中にいるときと外から見たときの印象の違いは、この照明に依るところが大きい。なんにも余計なもののない天井は、とてもピュアに建築のキャラクターを決定付けてました。
その他にも、各所で丁寧に”エッジ”が消されているのだけど、それは柱と壁と天井の境目をただ単純に曖昧にするってことではなく、もうすこし根元的な部分でコンセプトを成立させるための操作なんだと思います。
ぐりんぐりんと似たようなタイプの建築だけど、その印象は全く違います。左官の塗り分けやスチールのガラス装飾なんかは“人の手”を感じられる。もちろん巨大な曲面も、おそらく職人の手によって微調整された結果。そういう意味でも、年の瀬に、素晴らしい建築を目撃しました。
たぶんおそらく未来の古典、というよりは、特異点として残っていく建築です。
※見学する際は、必ず前もって電話連絡していくことをオススメします。素晴らしい建築である前に、市営の斎場であることをお忘れ無く。