1月2日。お正月早々の遠足です。雨の中車に乗って海岸沿いを高知県まで。途中、
ウトコリミテッド室戸工場(團紀彦建築設計事務所)なんかとすれ違いながら4時間。ようやく目的地に到着。
牧野富太郎記念館 設計:
内藤廣建築設計事務所
珍しい木造の博物館。
できた当時から見てみたいと思ってたけど、ここ1年ぐらいその想いは特に強く。内藤さんの建築で、ちひろ美術館・東京館よりも大規模で、馬車道駅よりも建築よりのものが見たいと。
組織とかカテゴリーとかスケールとか、そういうものの境界(正しくはその境界を飛び越えること)を知りたいというか。そういう境界について考えざるを得ないなぁ、というか。だんだんとそうなっていく予感がしているというか。ありふれた言葉でいうと”ボーダーレス”っていうことなんだろうけども、そういうことへの関心から、ここへ来たいと思ってたのです。
内藤さんは建築家ですが、東京大学社会基盤学科(旧:土木工学科)の助教授でもあります。”建築”と”土木”っていう境界を、ひょいっと飛び越えてしまってます。いや、「ひょいっと」ではないかもしれませんが、とにかく越えている。
小さいようで実は大きいんです、”建築”と”土木”の境界。こんな境界について、こんな境界を飛び越える術について、最近のボクはわりと意識的になっている気がします。異なるカテゴリーや違うスケールを自由に行き来したいと思ってる。
ありきたりの感想ですが、とっても良い建築でした。いや、良い構築物でした。外観はない、と言ってしまっていいほどその存在は山の中に埋め込まれています。想像よりも高さのある、あのクロワッサンみたいな屋根も山の中ではまるで存在感がなくて、見えてから認識するまでにタイムラグがある。
100%人工物なのにとても“自然”。そんな印象です。
ギリギリまで低く抑えられた軒先、集成材の構造部材、黒く塗られた鉄のパーツ、杉板型枠のコンクリート。内部空間的な外部がふんだんに用意されていて、どことなく日本的な空気を感じます。
空間構成としては非常にザックリしてるんだけど、実際の空間はとても繊細で綿密。雨樋の処理なんかもう、涙モノです。バリアフリーの問題だって、とても素直に解かれてる。
“いいデザイン”という言葉で修辞するには、言葉が軽すぎる気がします。紛れもなくデザインされた建築なんだけども、デザインという言葉があまり似合わない。いわゆる“意匠”とは違う文脈でデザインされているからかもしれません。実はこれって、あの「スーパーノーマル」なんじゃないか、とか。まぁ特殊解としての、ですが。
探している答えは見つかったような、見つかってないような。でもおかげで2007年のスタートは、とても清々しいものになったことは確か。気持ちを一歩、前に進められそうです。