市内に引っ越してから、映画館まですごく近くなったので、映画との関わり方がまたちょっと変わって。
思い立ってレイトショー。
夜遅くの映画館は、そわそわざわざわした空気が少し薄らいでるから、なんだか最近好きな場所になりつつある。
ビール片手に「風立ちぬ」を観て。
ひとはいつも、どこか、矛盾の中を生きている。算数の式のように、解法や解答が1本道であることはなかなかない。
美しいものをつくりたい。
でもそれは、自分の思う美しさとは別に役割を与えられ、そういう利用をされてしまう。
この映画にはそんな矛盾が、わりとそっけなく描かれてる。その矛盾に立ち向かえる純真さと、「力を尽くしなさい」という言葉と一緒に。
オトナのためのジブリ。専門家や批評家からはいろんな意見があるみたいだけど、ボクはとても良いアニメーションだと思います。
庵野さんのアフレコも、賛否両論あるんだろう。そりゃもうずいぶんと棒読みだし、抑揚もないし。でも、“わざとらしさ”は欠片もない。僕たちの住んでる世界には棒読みっぽく喋ったり、フラットに喋るひとは実在する。アニメーションへの期待と、その期待への裏切り。それもまた矛盾に満ちた世界を表現する一つの方法だったのかもしれない。
ただ1シーン、庵野さんのアフレコにグッときた場面があった。嬉しさに、声を詰まらせるあのシーン。あのアフレコは、プロにはできないんではないか、と思う。